「みせるだけ」を App Store で公開した翌日、友人がアプリを試してくれました。
そして、丁寧にいくつかの改善ポイントを指摘してくれたのです。
「ここはお年寄りには分かりにくいかも」
「これだと使いづらいんじゃない?」
開発者一人では絶対に気づけない視点ばかりでした。
今日はそのフィードバックを反映した v1.1 を App Store に申請しました。本記事では、改善した3つのポイントと、その背景にある「お年寄り目線」の大切さについてお話しします。
公開してたった1日でアップデート申請
「みせるだけ」を申請したのが昨日、審査が通って公開されたのも昨日。それから24時間も経たないうちに、改善版を作って再申請することになりました。
開発しているときは、自分なりに「お年寄りでも使いやすいUI」を意識して作ったつもりでした。シンプルなボタン、大きな文字、優しい言葉遣い……。
でも、実際に使う人の目線に立つと、まだまだ気づけていない部分があったのです。
友人からの3つの指摘
1. 「終了」はアプリの終了と勘違いされる
録音画面の下に「やり直し」と「終了」の2つのボタンがあったのですが、友人にこう言われました。
「『終了』ってあると、アプリ全体を終わるのかと思ってしまうよ。ここで終了したら、また最初からアプリを開き直さないといけないんじゃないか不安になる」


たしかに。
私が意図していた動作は「録音画面から起動画面に戻る」だけ。でも、ユーザーから見ると「終了」という言葉は重く受け取られます。
特に年配の方は「何かを消してしまうのではないか」と慎重になりがちです。
→ 「戻る」に変更しました。「やり直し」「戻る」の2つになり、両方とも「今の状態を変えるアクション」として一貫性が出ました。
2. 文字が消えるのが早すぎる
これは私自身、気づいていなかった重大な問題でした。
「お父さんが話して、文字が表示されたとするよね。それをお母さんに見せようとしている間に、文字が消えちゃうんだよ。もたついていると次の操作ができなくなる」
実際の使い方を想像すると、こうです。
- 父が「健康保険証を持ってきて」と話す
- 私が文字を確認する(2秒)
- 母の方に向けて、画面を見せる(5秒)
- 母が読む(5秒)
- もたついていると、認識タイムアウトで文字がクリアされてしまう
確かにこれだと使い物になりません。
→ 次の操作(やり直し or 戻る)が押されるまで、文字を画面に残し続ける仕様に変更しました。これで何分でもじっくり見せられるようになりました。

3. 起動画面に「アプリの終了」ボタンを
「年配の方ってね、スマホのアプリの終了方法を知らない人が多いの。だから、起動画面に『アプリの終了』ボタンがあると親切だよ」
これは目から鱗でした。
私たち開発者やスマホに慣れた世代は「アプリを閉じる時はスワイプアップ」「タスクスイッチャーで上にスワイプ」など、当たり前のように使っています。
でも、お年寄りからすると「どうやってこのアプリを終わらせればいいの?」という疑問は切実な悩みなのです。
→ Android版に「アプリの終了」ボタンを追加しました。

ただし、iOSはAppleのガイドラインで「アプリ側から強制終了する機能の実装は推奨されない」とされているため、iOS版では非表示にしています。プラットフォームごとの慣習にも気を配りました。
設計のポイント解説
① プラットフォーム判定
if (Platform.isAndroid) ...[
// ここはAndroidの時だけ表示される
],
②あえて控えめなデザイン
- メインの「開始」ボタンを目立たせる
- 「アプリの終了」は補助機能なので、控えめでOK
- 下線をつけることで「ここはタップできる」という見た目に
- グレーカラーで「行動を促す」感じを抑える
追加で発見した改善点
ご友人の指摘で集中して見直していたら、自分でも気になる点がいくつか出てきました。
スマホを横向きにすると画面が崩れる
実機で試していて気づいたのですが、スマホを横向きにすると一部のレイアウトが画面からはみ出してしまっていました。
→ 画面を縦固定にしました。「みせるだけ」のような会話補助アプリでは、横向きにする必要はありません。むしろ、お年寄りがベッドで寝ながら使う時など、意図せず回転してしまうとかえって混乱します。
LINEや計算機など、シンプルなツール系アプリの多くが縦固定なのも、同じ理由でしょう。
void main() {
WidgetsFlutterBinding.ensureInitialized();
SystemChrome.setPreferredOrientations([
DeviceOrientation.portraitUp,
]).then((_) {
runApp(const MiseruDakeApp());
});
}void main() {
WidgetsFlutterBinding.ensureInitialized();
SystemChrome.setPreferredOrientations([
DeviceOrientation.portraitUp,
]).then((_) {
runApp(const MiseruDakeApp());
});
}
- WidgetsFlutterBinding.ensureInitialized() → Flutter の初期化を完了させる(SystemChrome を呼ぶ前に必要)
- SystemChrome.setPreferredOrientations([DeviceOrientation.portraitUp]) → 画面を縦(上向き)に固定
- .then((_) => runApp(…)) → 向きを設定した後にアプリを起動
コードの非推奨警告を解消
これは見た目には影響しませんが、speech_to_text パッケージの新しいバージョンに合わせて、コードの書き方を最新のスタイルに更新しました。
将来のパッケージアップデートで動かなくなるリスクを減らすための、地味だけど大事な作業です。
全部で 8 つの改善
数えてみたら、v1.0 から v1.1 で以下の改善を行っていました。
- 「終了」→「戻る」に変更
- 確認ダイアログを「最初の画面に戻りますか?」に
- 文字が次の操作まで消えない仕様に変更
pauseForを 10秒 → 3秒に短縮- 「アプリの終了」ボタン追加(Androidのみ)
- 画面を縦固定に
- 非推奨API警告の解消
- 未使用変数の削除
ご友人からの3つ + 自分で気づいた問題 + 開発過程でのコード品質改善 = 計8つ。たった半日の作業で、これだけ進化できました。
ユーザーから学ぶ、ということ
このアップデートを通じて改めて感じたのは、「実際に使う人の声を聞く」ことの大切さです。
特に「みせるだけ」のように、自分とは異なる世代(高齢者)をターゲットにしたアプリでは、自分の感覚だけでは絶対に最適化できません。
例えば「やり直し」という言葉一つとっても、私たちが何気なく使う「クリア」「リセット」「キャンセル」では、年配の方には伝わりにくいのです。
ご友人が試してくれて、率直に「ここが分かりにくい」と教えてくれたことは、本当に貴重でした。
次のステップ
App Store には v1.1 を申請完了。審査結果を待っているところです。
Google Play は v1.0 が現在審査中のため、まずはその結果を待ってから v1.1 を申請する予定です。
そして何より、入院中の父にこのアプリを届けるのが、次の大きな目標。次回のお見舞いで、父と母が「みせるだけ」を使って会話している姿が見られたら、それが最高のリリース報告になります。
開発者として
シンプルなアプリほど、一つ一つの言葉選びや動きの細部に開発者の意図と配慮が宿るものだと思います。
「みせるだけ」は、これからもユーザーの皆さまからのフィードバックを反映しながら、より良いアプリに育てていきたいと思います。
アプリ名: みせるだけ – 大きな文字で会話
プラットフォーム: App Store(公開中)/ Google Play(v1.0審査中)
開発: SINQWELL(@sinqwell_dev)


