審査員のiPadには、思い出が入っていなかった

11本目のアプリ「Afterglow Trip」——写真をスキャンするだけで過去の旅行を自動で見つけ出し、一生に1枚の世界地図を育てるアプリ——のiOS版を、App Storeの審査に提出したときの話です。

Android版は先に公開されました。ところがiOS版は、提出から10日たっても「審査中」のまま。さすがに長いと思い、Appleに審査状況を問い合わせました。

翌日、メールが来ました。審査が動いたのです。問い合わせ、効きます。

ただし届いたのは「おめでとうございます」ではなく、却下通知でした。指摘は2件。

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指摘その1: App StoreにAndroidと書いてはいけない

1件目はシンプルでした。ガイドライン2.3.10——「App Storeの説明文から、Androidへの言及を削除してください」。

Afterglow Trip は、旅の記録を誰でも読めるオープン形式で保存します。だから機種変更でも、OSをまたぐ引っ越しでも、旅の資産をまるごと持ち運べる。これはこのアプリの大事な約束なので、説明文でも胸を張って書いていました。

でもAppleから見れば、App Storeの利用者に他プラットフォームの話は関係ない、というわけです。言われてみればそのとおり。説明文から該当の言葉を消して、この指摘は終わり。ビルドも不要、5分で済みました。

指摘その2: 「アプリ内課金が見つかりません」

2件目のメールには、こう書いてありました。

We are not able to continue because we cannot locate the In-App Purchases within the app.
(アプリ内でアプリ内課金を見つけられないため、審査を続行できません)

えっ、ちゃんとあるのに?——と一瞬思いました。そして原因に気づいた瞬間、思わず笑ってしまったのです。

Afterglow Trip の料金設計はこうです。写真ライブラリをスキャンすると、自宅から離れていた期間が「旅行」として検出される。直近12か月の旅行はずっと無料。それより古い旅行には🔒が付き、タップすると買い切りの購入画面が開く。

つまりこのアプリで購入画面にたどり着く唯一の道は、「1年以上前の旅行」をタップすることでした。

一方、審査員の手元にあるのは、おろしたての検証用iPad。写真ライブラリは空っぽです。GPS付きの、1年以上前の、旅先で撮った写真——あるわけがない。スキャンしても旅行はゼロ。画面には「まだ旅行がありません」と表示されたまま。

審査員のiPadには、思い出が入っていなかったのです。

思い出がなければ、課金ボタンにすらたどり着けないアプリ。設計としては筋が通っているつもりでしたが、審査は通りません。開発者の端末には何年ぶんもの写真が入っているので、「ゼロの状態」でどう見えるかに、最後まで気づけませんでした。

直し方:誰でも通れる入り口をつくる

対応はこうしました。画面右上の「⋮」メニューに、「すべての旅行を開放」という項目を常設したのです。旅行が1件もなくても、ここから購入画面が開きます(購入済みの端末では自動で消えます)。

審査員への返信には、この画像を添えました。言葉で4行書くより、矢印1本のほうが伝わります。

⋮メニューから購入画面への導線(審査員への返信に添付した画像)

直してみて気づいたのですが、これは審査対策である以上にUXの改善でした。今までのAfterglow Tripには、「このアプリ気に入ったから、先に買っておきたい」という人のための入り口がなかったのです。却下が、アプリをひとつ良くしてくれました。

個人開発者のための教訓

今回の一件で学んだことを置いておきます。

審査が長く止まったら、問い合わせていい。私の場合は10日停滞 → 問い合わせ → 翌日に審査が動きました。遠慮は要りません。

却下はゲームオーバーではなく、対話の始まり。App Store Connectのメッセージ欄で返信・修正して再提出すれば、同じ審査の「続き」として扱われます。提出を取り消してやり直す必要はありません。

リリース前に、まっさらな端末(またはシミュレータ)で全部の導線を歩くこと。開発者の端末はデータが豊富すぎて、ゼロ状態の落とし穴が見えません。審査員は必ずゼロから始めます。

そして、課金やコア機能への入り口を「条件付きの一本道」にしないこと。どんな状態の端末からでもたどり着ける道を、1本は用意しておく。

いま

修正ビルドと返信を送り、ステータスは再び「審査待ち」。今度こそ「おめでとうございます」のメールを待っているところです。

結果が出たら、追記します。


Afterglow Trip — 旅の余韻を、未来へ残す。

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